<LeoNRadio日の出 われらの商行為法12(場屋営業、倉庫営業)>ラジオ収録 20210123
場屋営業
場屋営業の定め→商事寄託の定め(商595条~617条)
寄託とは?
→当事者の一方があるものを保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約(民657条) ※2017年民法(債権法)改正→要物契約から諾成契約へ変更
民657条→民事寄託(非商人が寄託を受けた場合)
商595条→商事寄託(商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合)
商596条〜598条→商人の中でも場屋営業者が寄託を受けた場合の特則
商595条〜617条→商人の中でも倉庫営業者が寄託を受けた場合の特則
商人が一般に寄託を受ける場合→商事寄託(商法第9章商595条〜617条、第1節→商人が受寄者となった場合→場屋営業者の受寄者としての責任も含む、第2節→倉庫営業)
場屋(じょうおく)営業とは?
→客の来集を目的とする場屋(じょうおく)における取引(商502条7号)→営業的商行為の一つ
→旅館(旅店・ホテル)、飲食店(食堂・レストラン)、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(場屋営業者)
→例示列挙→一般公衆が集まるような施設(物的施設・人的施設)で、
各種のサービスを提供する営業→劇場、映画館(興行施設)、遊技場(娯楽・スポーツ施設)
※理髪店は判例上は、場屋営業ではない(理髪の請負または労務に関する契約があるだけで、設備の利用を目的とする契約は存在しないから。大判昭12・11・26民集16・1681)→学説から批判
場屋営業→場屋には多数の客が来集→その施設に滞留→所持品携帯→滅失・損傷→場屋営業者に重い責任
なぜなのか?
商事寄託における受寄者に共通する注意義務→商595条
民事寄託→有償・無償で注意義務の程度を区別
無償受寄(無報酬で寄託を受けた)の受寄者→「自己の財産に対するものと同一の注意」をもって寄託物を保管する義務(民659条)→民法の特則
有償受寄(報酬を受けて寄託を受けるた)の受寄者→善管注意義務(民400条)→より高度な義務
民400条→特定物の引渡しの場合の注意義務→善管注意義務→民法の一般規定
寄託物・受寄物の返還→特定物の引渡し+有償受寄(民659条との対比から)
商事寄託→有償・無償にかかわらず高度な善管注意義務
→有償、無償にかかわらず、受寄者は→善管注意義務→受寄者である商人の信用力を高め、寄託者を保護するため(商595条)
場屋営業者の責任(商596条〜598条)
寄託契約がある場合
寄託契約がない場合
客から物品の寄託を受けた場合(商596条1項)→寄託契約がある場合の場屋営業者の責任
寄託契約上の責任→契約の債務不履行責任→損害賠償責任(民415条)→過失責任
民事寄託であろうと商事寄託であろうと一般的に受寄者の責任→寄託契約に基づく債務不履行責任(民415条)→債務不履行→債務者の責めに帰することのできる事由によるもの→過失がなければ責任を負わない(過失責任)
→しかし、商事寄託の中でも場屋営業者には特則→場屋営業者の受寄者としての責任(寄託物の滅失・損傷)→「不可抗力によるものであったことを証明しなければ損害賠償の責任を免れることができない」→過失がなかったこと(無過失)に加え、不可抗力によるものであったことまで立証しなければならない(商596条1項)。→無過失責任!?
→場屋営業者の重い責任(責任の加重)
場屋営業主の責任はなぜこのように重いのか?
→旅店主や運送人が盗賊と結託して、客から預かった荷物を奪うことが多かったローマ時代において、
受領という事実だけで厳格な結果責任を課していたローマ法上のレセプツム(receptum)責任に由来
寄託を受けたかどうかが争われた裁判例
ホテルの敷地内で自動車を移動させるために自動車の鍵をホテルの従業員に預けた場合→寄託あり(大阪後高判平成12・9・28判時1746・139)
ゴルフ場のクラブハウス内の貴重品コインロッカーに財布を預けたが盗取された場合→寄託なし(秋田地裁平17・4・14判時1936・167)
不可抗力の定義
→一般に、当該事業の外部から生じた出来事で、事業者が通常必要と認められる予防を尽くしても防止することができない危害
主観説→事業の性質に従い、最大の注意をもってしても避けられない場合→無過失責任に近く、厳しすぎ
客観説→特定事業の外部から発生した出来事で、通常その発生を予測できないもの→過失責任だが厳しすぎ
折衷説(通説・裁判例)→特定事業の外部から生じた出来事であって、かつ、通常必要と認められる予防を尽くしてもその発生を防止できないもの
客から物品の寄託を受けない場合→寄託契約がない
客がとくに寄託しない物品→寄託契約がない→場屋の中に携帯した物品→場屋営業者が注意を怠ったこと(善管注意義務違反=過失)によって滅失・損傷したとき→場屋営業者は損害賠償責任を負う(商596条2項)→過失責任→場屋営業者の過失の立証責任は客側にあり。
免責の一方的表示
→例えば、張り紙「お客様の携行品が万一盗難、紛失、損傷したとしても、当方は一切、責任を負いかねます。」
客の携行品については責任を負わない旨の一方的表示→一方的表示には意味がない→場屋営業者は商596条2項の責任を免れない(商596条3項)→一般公衆を保護するための強行規定
ただし、商法596条1項・2項は任意規定→当事者間の別段の合意があればそれを優先→場屋営業者の責任を免除または制限する特約(約款)はありうる。
高価品の特則
貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類および価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失・損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない。(商597条)
問題は、高価品である旨の通知はなかったものの、場屋営業者またはその使用人がそれを知っていたか、または故意に損害を与えた場合でも、この高価品の特則は適用されるのか?→免責されない!
→商法577条2項(一定の場合における高価品の特則の適用を排除する規定)と同様に解することができるのではないか?→類推解釈
→不法行為による法律構成もあり得る判例あり(大判昭17・6・20新聞4787・13)
責任の短期消滅時効
場屋営業者が悪意でない限り、寄託物を返還し、または客が場屋の中での携帯品を持ち去った時から1年
倉庫営業
倉庫営業者→他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者(商599条)
倉庫営業→寄託の引受け(商502条10条)→営業的商行為
倉庫営業についての業法的規制→倉庫業法
倉庫業法上の定義
倉庫→物品の滅失もしくは損傷を防止するための工作物または物品の滅失もしくは損傷を防止するための工作を施した土地もしくは水面であって、物品の保管の用に供するもの
倉庫業→寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業(B2B)
トランクルーム→その全部または一部を寄託を引き受けた、消費者の物品の保管の用に供する倉庫(B2C)
倉庫営業者の登録→国土交通大臣の登録
倉庫寄託契約→諾成契約(平成29年改正前民法では要物契約。要物契約から諾成契約へ)
民657条→寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる。
倉庫寄託約款→倉庫営業者は倉庫寄託約款を定め、その実施前・変更時に国土交通大臣の届け出なければならない。国土交通大臣は、倉庫寄託約款が寄託者または倉庫証券の所持人の正当な利益を害するおそれがあると認めるときは、当該倉庫営業者に対し、期限を定めてその倉庫寄託約款を変更すべきことを命ずることができる。
寄託者←倉庫寄託契約→倉庫営業者
倉庫営業者の義務
目的物保管義務
善管注意義務(民659条、商595条)→商人が営業の範囲内で寄託を受けた場合→無報酬であっても善管注意義務
倉庫業法上の付保義務(一定の場合の火災保険)
再委託・保管場所の変更→寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用できないし(民658条1項)、その承諾を得たか、やむを得ない事由があるとき以外は再寄託もできない(同条2項)。また、正当な事由がなければ保管場所の変更もできない(民664条ただし書)
通知義務→寄託物につき権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、または差押え、仮差押えもしくは仮処分をしてきた場合、原則として倉庫業者は遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない(民660条1項本文)。
倉荷証券の交付義務→倉庫営業者は、寄託者の請求により、寄託物の倉荷証券を交付しなければならない(商600条)。
帳簿記載義務→倉庫営業者は倉荷証券を寄託者に交付したときは、その帳簿に所定の事項を記載しなければなならない(商602条)。
寄託物の点検・見本摘出義務→寄託者または倉庫証券の所持人は、倉庫営業者の営業時間内は、いつでも寄託物の点検もしくはその見本の提供を求め、またはその保存に必要な処分をできることから(商609条)、倉庫営業者にはこれに応じる義務がある。
目的物の保管期間および返還義務
(1)保管期間の定めがある場合→受寄者(倉庫業者)は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない(民663条2項)。→標準倉庫寄託約款(甲)→受寄物の保管期間は3か月。
(2)保管期間の定めがない場合→倉庫営業者は、やむを得ない事由があるときを除き、寄託物の入庫日から6か月を経過した後でなければその返還をすることができない(商612)。民法の場合、受寄者はいつでも目的物を返還できる663条1項)。
(3)返還の場所→原則はその保管をすべき場所で。しかし、倉庫営業者が正当な事由によりその物を保管する場所を変更したとき→現在の場所で(民664条)
(4)返還の相手方
倉荷証券が作成された場合→倉荷証券所持人に対して
倉荷証券が作成されていない場合→原則として寄託者に対して(民660条2項本文)。ただし、目的物を第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決があったときは、当該第三者に対して(同条2項ただし書)。
倉庫営業者の責任
倉庫営業者は寄託物の保管に関し、注意を怠らなかったことを証明しなければ、その滅失または損傷につき損害賠償の責任を免れることができない(商610条)
倉庫営業者の責任=過失責任 注意を怠らなかったことを証明→過失推定責任
標準倉庫寄託約款(甲)→故意・重過失(軽過失免除)、立証責任は寄託者等の請求者に転換
内容不知約款(免責約款)→目的物の内容・個数・重量・数量等が正確か否かについて倉庫営業者が不知である場合、一切の責任を負わない旨の約款
判例(最判昭44・4・15民集23・4・755)→内容を検査することが容易でなく、または荷造りを解いて内容を検査することによりその品質または価格に影響を及ぼすことが、一般取引の通念に照らして、明らかな場合に限って有効。
倉庫営業者の責任の消滅事由→寄託者または倉荷証券の所持人が異議をとどめないで寄託物を受け取り、かつ、保管料等を支払ったときに倉庫営業者の責任は消滅(商616条)。
倉庫営業者の責任にかかる債権の消滅時効→寄託物の出庫日から1年。
倉庫営業者の権利
保管料支払請求権(商512条)
費用償還請求権(民665条、650条)
民650条 受任者による費用等の償還請求権
目的物の供託および競売権→寄託者または倉荷証券の所持人が寄託物の受領を拒み、またはこれを受領することができない場合、目的物の供託、相当の期間を定めて催告した後に競売(商615条、524条1項・2項)
倉荷証券
目的物返還請求権を表章した有価証券
寄託者→請求→倉庫営業者
| ←倉荷証券 ↑
受寄物の処分 ↑
↓ ↑
倉荷証券 ↑
所持人ーーーーーー|
性質→要式性、法律上当然の指図証券性、受戻証券性、要因証券性、処分証券性
倉荷証券の債権的効力→倉庫営業者は倉荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない(文言証券性)(商604条)→倉荷証券の債権的効力→証券上に記載されている文言(もんごん)どおりの効果が発生する。
倉荷証券には相矛盾する要因証券性と文言証券性が並存しているため、その調和を図ることが重要
品違い(倉庫営業者が受け取った目的物と倉荷証券上の記載が異なっている場合)→判例は、文言証券性を重視→証券に記載されている目的物を返還できない→債務不履行責任
空券(実際には目的物を受け取っていないにもかかわらず、倉荷証券が発行されている場合)
→判例は、契約もないかもしれないし、あったとしても目的物を受け取っていないかもしれない→要因性を重視し、証券を無効とする。
倉荷証券の物権的効力
寄託物の処分→倉荷証券が作成された場合→倉荷証券によってしなければならない。(商605条)
倉荷証券を引渡したとき→その引渡し→寄託物について行使する権利の取得に関しては、寄託物の引渡しと同一の効力を有する(商607条)→つまり、倉荷証券を引渡したことは、寄託物を引渡したことと同じ効力。
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